化学療法部の紹介
化学療法部の紹介
がん薬物療法は殺細胞性抗がん薬の開発から始まり、特に1980年代以降急速に発展してきました。2000年代にはがんの分子生物学的な研究が進展したことにより様々な分子標的薬の開発が進み、また免疫とがんとの関わりについてもメカニズムが解明され始め、2010年代からは免疫チェックポイント阻害薬が様々ながん種で使用されるようになっています。
このようにがん薬物療法は急速に進歩していますが、そのスピードについていきながら、目の前の患者さんに対して的確な治療を行っていくことが求められています。また新規抗がん薬は従来の抗がん薬と比べ毒性が軽く投与時間が短縮されたものが増えているのに加え経口の抗がん薬も増えており、がん治療の場は入院から外来へと大きくシフトしています。
名古屋大学医学部附属病院では化学療法部が2006年に創設され、外来化学療法室が同年5月より稼働を開始しました。外来化学療法室の利用者は年々増加しており、また2018年1月からは中央診療棟Bの1階に移転し、2019年1月時点で1日平均40名強の患者さんに治療を行っています。
外来化学療法を受ける患者さんは、まず各診療科の診察を受け、その後に外来化学療法室に移動します。そして問診を受けた後に、リクライニングチェアやベッドで点滴や注射を受けて帰宅します。治療中はチェアやベッドに備え付けてあるテレビをみたり、食事をしたりすることができます。
化学療法部では、外来化学療法室の運用に加え、診療科横断的なカンファレンスやコンサルテーション対応、化学療法レジメン(抗がん薬の種類・投与量、支持薬、投与の順番をまとめたもの)の整備、緩和ケアチームの活動、がん診療連携拠点病院の事業、がんゲノム医療外来、そしてがん薬物療法の実践的な教育などに取り組んできました。これらは、いずれも日頃からの各診療科や部門との連携によって、初めて実践できるものです。また化学療法部では専用病床を運用しながら、新規抗がん薬の治験(第I相試験が中心)や稀ながん、また重篤な合併症をもつ患者さんなどの入院診療も行っており、腫瘍内科としての役割を担っています。
がん薬物療法が今後ますます発展するとともに、がん薬物療法を専門とする部門や腫瘍内科への期待はいっそう大きくなるでしょう。殺細胞薬はもちろん、分子標的薬や免疫療法も臓器横断的に使用されるものが多く、またこれらの抗がん薬は多彩な副作用を呈します。副作用をうまくコントロールするためには、担当医だけで診療を行うのではなく、今までがん医療と関連が少なかった分野の専門医やコメディカルとの連携が重要になります。腫瘍内科やがん薬物療法を専門とする部門は総合病院の中でこそ、その機能が十分に発揮されるものであり、その意味で名大病院には先駆的な役割があると考えています。また名大病院は「臨床研究中核病院」、「がんゲノム医療中核拠点病院」に選定されており、その業務においても化学療法部は重要な役割を果たしています。